Essay/Column/Diary
ドイツのベッドは狭い?
サーキットでのスケジュールが終わるとホテルに向かう。そのドライバーが運転し、チームのスポーティングディレクターとフィジカルトレーナーの2名も同乗し、私を含めて4人で毎日移動した。
ホテルはサーキットから15分位のところにあって、ドイツらしく大きな屋根の傾斜が美しい建物で、私の部屋は最上階だった。
その最上階は外見からは屋根になり、つまり屋根裏の部屋である。幸い、端の部屋だったので妻面に窓が設けられている。明り取りは、それと天窓があった。しかし、この日は雨がガラスを叩いているばかりで天窓はかえって寒々として見えた。
ということは、あいだの部屋では壁に囲まれ窓も無いはずで天窓のみか。案外、外から見た雰囲気の良さと内側では違うものである。
問題はベッドだ、やけに狭い、特に幅が無い、ベッドの木枠がマットと同じ位に高く、寝返りが打つと体が当った。
「なんじゃ、このホテルは」
とはいえ、チームの主たるメンバーも一緒だし、そんなにひどい所では無いはずで、まあ、これくらい何ということも無い。
朝食は、当然コンチネンタル・ブレークファーストだ。一寸驚いたのは、チームのフィジカルトレーナー達と一緒に食事をしたが、彼は、まずパンをハンバーガーを作るように横に切り、その平らな面に苺ジャムを山盛りに載せた。彼はドライバーの食事まで管理するトレーナーである。それが、そんな砂糖の塊みたいなものを食べるのかと、不思議な光景だった。
話が脱線した。
とりあえず、そのホテルには3泊し、日曜のレース後はフランクフルトに移動し宿泊する。
そこは自分でインターネットで予約したものだ。フランクフルト中央駅のすぐ横にあり、ドイツ国鉄(DB)の経営するホテルだ。兄は何度か泊まっていて、教えてもらった。
小さなホテルだが近代的で小奇麗なビジネスホテルだ。
ところが、ベッドはこれまで泊まったホテルと似たようなサイズで木枠が無いので良かったが、明らかに日本のシングルより幅が狭い。
「ええっ、これがドイツのベッドの標準なのか?」
「ということは、シューマッハもこんなベッドに寝ているのか、あのシューマッハも」
「ドイツ人は寝返りを打たないのか?」
などと、妙な疑問がフツフツと沸いた。
帰りのフライトは火曜日だった。従って、月曜日も宿泊するのだが、このホテルはインターネットの予約時にすでに月曜は満室で、因みに、他のフランクフルトのホテルも同様に予約がとれない。どうも何かの博覧会(メッセ)がフランクフルトであるらしくホテルは全滅、もしくは価格が倍増していた。
なら、何もフランクフルトに泊まることも無いと、鉄道移動で適当な場所を考え、コブレンツという街のホテルを、これもインターネットで予約していた。
コブレンツはフランクフルトの西方に位置し、特急IC(インターシティ)で1時間の距離で、ライン川沿いを走る風光明媚な路線にある。車両は個室式のコンパートメントタイプだったが、窓側、つまりライン川に面する側に席がとれたので、ずっと景色を眺めながら行った。
ラインの雄大な流れと、其処此処に古城が見え、中世の雰囲気の残る美しい景色を見ての移動は素晴らしいものだった。ただ、残念ながらローレライを見つけることは出来なかったし、誰も手を振っていなかった。
ドイツ人には大きな人は多いのに、こんなベッドが標準なのだろうか、と疑問は再燃した。
この街で印象的だったのは、ライン川沿いには瀟洒なホテルが立ち並び、とても良い雰囲気を醸し出していた。そして、街の中心部は少し古い街並みのままであり、商店街も旧態依然とした感じだったが、何故か多くの人が地下に向かうので降りてみると、地下には近代的なショッピングモールのような作りの地下街が広がり、新しく、おしゃれな店がいくつもあった。
なるほど、古い街並みを守りつつ、現代の生活を送れる工夫であると関心した。
なのに、ベッドは何故狭い、と堂々巡りを繰り返す。
後日、知人がドイツに行き、コブレンツにも泊まったと言う。
「ドイツはベッドが狭かっただろ」
「いや、別に、普通だったけど」
ん!
「で、コブレンツはどの辺のホテルに泊まったの」
「ライン川沿いのきれいなホテルで、云々・・・」
そうか、あのあたりの感じの良い、高そうなホテルだ。
ということは・・・ 何だ、値段次第なのか。
そうか、そうだよな、そういえば私の泊まったホテルは安いホテルばかりだ。
いとも簡単に謎は解けてしまった。
それにしても、いくら格安なホテルでも、あのベッドは狭いよなぁ。


