Essay/Column/Diary

あれれ、新型が来てしまった

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アーバンライナーNext津_2.jpg

毎月1回、仕事で大阪に行く。
道の混雑や駐車料金の関係で車を使わず近鉄を利用している。
近鉄には素晴らしく快適な特急「アーバンライナー」があるが、名阪間ノンストップ特急なので、通常、私の住む三重県内は止まらない。ただ、一部の列車は津や桑名に停車し、丁度、私が大阪に向かう時間には津駅に停まるアーバンライナーの設定があって、何時もそれを利用させて頂いている。

今年の3月か4月頃だったと思うが、大阪に向かう車中、車掌さんと少し会話を交わした。

アーバンライナー旧_津_2.jpg

その前に、アーバンライナーには2種類の車両がある。
最初のアーバンライナーは1988年に登場し、後年、リニューアルされてアーバンライナーPlusとなった車両(写真左)と、2002年に登場した新型のアーバンライナーNext(冒頭の写真)である。
何でも新しい方が進化していて良いものだが、ことアーバンライナーに関しては、私は旧型の方が好きである。
その日も幸い旧型、アーバンライナーPlusだった。
携帯電話を使う為、車両の最後尾のデッキに行ったのだが、そこに居た車掌さんとひょんなことから話しをした。

アーバンライナー窓際_2.jpg

私。
「今日はアーバンライナーPlusで良かったのですが、新型は一寸、良くないですね」
車掌氏。
「それは、どんなところですか」
「何か格好を優先して使い勝手に欠けているようで、例えば窓枠ですが、厚みを抑えて車内を広くモダンに見せるのは解りますが、小さなトレイだけでは不便ですね、シートから出る折りたたみテーブルは使いづらい。やはり窓下の部分に色々置きたいし、あのスペースは鉄道車両の特徴だと思いますね」
「確かに窓際にはジュース2本位しか置けないですね」

アーバンライナー旧窓際_2.jpg

旧型はこの写真のように窓下が棚状で、色々ものが置けるし、何より鉄道車両らしい。特に、私の場合、移動中に資料を作ったりするので、このスペースは必要ですらある。
私は続けた。
「それに、一番嫌なのは男子用トイレです、前後幅が無くて便器が近いし、狭くて体の向きも変えれずに、後ろ手で引き戸を開けて出入りするのは何とも不便です」
「ああ、そうなんですか」
新型のトイレは通路向かい側の女子トイレを身障者対応として幅を広げた為に男子トイレの前後幅が異様に狭くなっている。しかし、男子トイレは横方向に向かっているから狭いのであり、前後方向にレイアウトすれば簡単に解決するはずなのだが。

アーバンライナー旧車内.jpg

「何より、新型は全体にモダンにはなったけど重厚感が無くなり、落ち着かない雰囲気になったので、旧型の方が好きなんです」
(写真は初期のアーバンライナー車内)
などと言うと車掌さん、同意している様子で。
「最初のアーバンライナーはバブル期の真っ最中に作ったので、とてもよく出来ています・・・」
という話から始まり、新旧車両の違いを色々説明してくれて、最後には新型車両へのボヤキのような話まで聞かせてくれた。
そして、
「でも大丈夫です。新型は外人さんの運転する車と踏切事故に遭い、今、五位堂の車庫で修理しています。おそらく、今年いっぱいは修理にかかると思います」
と教えてくれた。
そして、五位堂車庫の横を通過するときに見ると、確かに、切り離されたアーバンライナーNextの姿が見えた。(破損した車両は工場内で修理している意)

そんなことをすっかり忘れて今月も大阪に向かった。賢島行きの特急を津で降りて、10分乗り換えでアーバンライナーを待った。
場内放送がアーバンライナーの到着を告げると、電車が入って来た。
「あれれ、新型が来てしまった」
あのとき、新型は2編成しかないと聞いていたので、場合によっては、無事な1編成に当たったのかな、とも思った。
奈良県に入り、大和八木を通過し、そして五位堂車庫の横を通過するときに見ると、もう、アーバンライナーNextの姿は無かった。
「ああ、これがあれか」

随分、早く修理が出来たのだろう。
それは良いことなのだろうが、私には一寸残念な気持ちだ。

PS:
最初のアーバンライナーが登場した時、素晴らしい車両だと感銘を受けた。
それまでの近鉄特急は伊勢志摩観光など、あくまで観光を主体とした車両作りで、ビスタカーと呼ぶ2階建て車両を長年に亘り目玉車両としてきた。
アーバンライナーは新たな商品として名古屋、大阪という2大都市を高速/快適に結び、ビジネスユーザーを取り込む、とした新しいコンセプトの車両であり、私鉄では日本最速で飛ばし、故に伝統ある2階建てを止めて低重心設計としたり、一方では快適な車両作りを目指していて、グリーン車並のデラックス車も設定したりと、ライバルである新幹線より時間はかかっても料金が大幅に安く、出発時間も名阪共に毎時0分発の判り易い設定、などなど見事な企画で、登場以降、利用客は目に見えて増えていった。
個人的には、車両の開発方針がよく見えた。
新幹線をはじめ、鉄道車両も高速/軽量化を目指すと航空機を真似る姿が散見される。
新幹線0系の顔はYS11そのものだし、300系以降の内装の窓周りやテーブルの構成は航空機に類似している。
そうした中、アーバンライナーは「鉄道車両のアイデンティティとは何ぞや」と、一から考察された感が強い。
これは私の想像だが、鉄道車両は飛行機と違い車体断面は丸くないので、四角く広い空間が取れ、天井を高くして広さを表現。また、鉄道では航空機ほどの軽量材を使う必要は無く、各部の材料は軽々しく薄っぺらな感じは無く、シートをはじめ車内は重厚感すら漂う。
照明は車内の雰囲気を出すのに重要で、天井の間接照明、網棚下の照明、窓間の電灯照明などを組み合わせた凝ったもので、高級感を出している。
こうして車内は静かで落ち着いた雰囲気が作られていて、大げさに言えば、ホテルのロビーに居るような落ち着いた気持ちで居られる。

近鉄は近畿車輛という系列の鉄道車両会社を持ち、そのフラッグシップカーとして、威信をかけて作った感じを受ける。

私の最も好きな車両のひとつではある。


Profile

☆畑川 治 1947年生まれ
レースアドバイザー
趣味: 運転、旅行、鉄道、その他

このブログ記事について

このページは、Osamu Hatagawaが2008年7月18日 10:59に書いたブログ記事です。

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