Essay/Column/Diary

F1 ドクターカー

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1987スタート.jpg

そうか、F1日本グランプリだった。(写真はプログラムを撮影)
どうも地元の鈴鹿で開催されないとレース前の盛り上がりを感じられない。
因みに、F1レースに全く関係したことが無いかと言えば、そうでもなくて、端役ではあるが、お手伝いをしたことがある。
写真は1987年の鈴鹿でのスタートシーンであるが、F1マシン郡の後ろにヘッドライトが見える。多分あれが私の乗るドクターカーだ。

鈴鹿でF1グランプリの始まった1987年から1998年までの10年余り、F1ドクターカーのドライバーをやった経験がある。
ドクターカーとは、当然、ドクターを乗せてレース中に待機、出動するもので、鈴鹿では5台がコースの5箇所に別れてスタンバイしている。
私の乗るドクターカーはワトキンスカーとも呼ばれていて、F1の専属医ドクター・ワトキンスを乗せ、他に外人医師と日本人医師を乗せた3人体制で、当然、救急医療器具も積んでいる。
そして、写真のようにヨーイドンの時にはF1マシンの後方から一緒にスタートし、最も危険の多いレース直後の事故に備えて、まるまるサーキットを1周付いて回ることもする。
また、赤旗が出た時にはワトキンスカーだけはオートマチックゴーで、1コーナー手前のメディカルセンターからF1の走っている中に飛び出して行くことになる。
従って、ドライバーにはレース経験者が求められ、海外レースも経験している私にお声が掛かったようだ。
スタート後に1周付いて回るとは言ってもF1とドクターカーでは圧倒的な性能差があり、コースの後半ではF1の先頭の位置を無線で確認して逃げ切れるかの心配をすることになる。
スタート後に事故があり、大きな怪我をしていれば、無論、その場で救急活動をするが、軽度のクラッシュだと、ドライバーが大丈夫と確認出来るまで停止し、ワトキンスがGOを出してから走るので、4人乗りの車を本当に目一杯走らせて追いかけるのではなく、逃げることになる。

amg_f1_safemed_03.jpg

写真は現在のドクターカーで最新のCクラスAMGを使っている。
私の時も終盤にはFIAの用意する瓢箪目のCクラスだったが、当初はサーキットサイドの用意する車で、シビックに無限の足を組み込んだ車を使っていたが、これが素晴らしく速かった。
あれはいつのレースだったか、大雨の中スタートした時のこと。
当時はドクターカーの前にNSXのマーシャルカーもスタート後、周回していた。
スタートグリッド後方に付くとコントロールタワーから無線が入った。
「ピットスタートの車があります」
何らかのトラブルでグリッドに付けなかった車がスタート出来るようになったのであり、時々あることだ。
「了解!」
ヨーイドンすると前のNSXは多少ペースをセーブして、レーススタートした競技車の最後尾の車が通過後にピットロードがオープンされるので、そこから入って来るF1マシンを先行させた。
幸い、スタート事故もなく、1コーナーも全車が綺麗に抜けたようだ。
我々も1コーナーから2コーナーに向かう。
「あれっ、車が滑った」
私は大カウンターステアを当てた。
幸いスピンすることなくコーナーを立ち上がるが、いくら雨とは言えども滑り過ぎる。
注意してS字に入るが、やはり滑る、ツルツルだ。
「何だ、これは」
前のNSXもペースが遅くて追い付きそうだ。
すると今度は前が見えなくなってきた。
「そうか、オイルだ」
どれかのF1が大量のオイルを撒いていて路面がツルツルになり、NSXの跳ね上げる飛沫のオイルが私のフロントガラスに付き、ワイパーで擦るのでウイントが白濁してしまうのだ。
これは地獄だ。
危ないからとゆっくり走る訳にはいかないし、スピンなどとんでもない。
そして万一、F1に追い付かれてドクターカーが追い越されるシーンが世界中に放映されるテレビに映った日には、鈴鹿サーキットはFIAから大きなペナルティを受けることになる。
視界の確保もままならぬまま、何とかツルツルの車を必死で走らせるが、何と鈴鹿のコースは長いことか。
やっと裏ストレートに入り、西コースのピット前に来ると1台の車が停止していた。
「あいつだ犯人は」
「そうかピットスタートした車だ、あれがオイルジャジャ漏れでここまで走り、息絶えたのだ」
「今、先頭は何処?」
無線でコントロールタワーに聞いた。
「先頭はスプーンに向かっています」
ひえっ、もうそこまで来てるのかよ。
最後の130Rをまわりピットロードに滑り込んだ。そのピットロードのピットに至るまでにシューマッハが横を走り抜けた。

F1って裏方も結構大変なんですよ、ホント。

Profile

☆畑川 治 1947年生まれ
レースアドバイザー
趣味: 運転、旅行、鉄道、その他

このブログ記事について

このページは、Osamu Hatagawaが2008年10月10日 12:30に書いたブログ記事です。

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