Essay/Column/Diary

近鉄の車窓に想う

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鉄橋西修正トリミング.JPG

ほぼ毎月1度、仕事で大阪に行くのだが、近鉄を利用する。
近鉄の路線は青山あたりから長谷寺あたりまで山間を通るので、とても美しい景色が連続する。特に今は新緑が綺麗で、右に左に美しい景色を見ながら快適なアーバンライナーで移動するのは、とても気分が良いものだ。
そんな景色を眺めつつ、ふと、思うことがあった。

赤目付近.JPG

窓の外は自然のままの景色だったり、あるいは昔からの伝統的な作りの家々が見られ、まるで時が止まったような景観を楽しんでいるのだが、その時間の動きとは逆に、乗っているアーバンライナーは大私鉄ならではの整備の行き届いた路線で快適に飛ばして走っている。

渡り新線工事.jpg

そう言えば、伊勢中川の名古屋線から大阪線への渡り線の工事をしていた。
この渡り線は、名古屋~大阪間の直通特急列車の為にあり(急行以下に直通は無く、伊勢中川で乗り換える)単線の急カーブで短絡していて、さすがのアーバンライナーもここばかりはソロソロと走る。
で、写真のように少し内側に新線を作っているようなのだが、橋桁の幅から複線のようだし、カーブの半径も少し大きくしているようだ。
このように線形を広めてスピードアップを図る努力を近鉄は惜しまずによくやると思う。
名古屋を出てから関西線をオーバークロスする急カーブは数年前に広げたし、奈良の桜井でJRを跨ぐ鉄橋部分の線形も前後して広めた。

関谷トンネル.JPG

極めつけは奈良と大阪の県境にあたる柏原あたり、写真のトンネルは旧線の玉手山トンネルで、このトンネル後は左の急カーブで山と川の間を徐行して走っていたが、今乗っている新線は真っ直ぐに新玉手山トンネルを抜けるのでカッ飛ばしたまま大阪に入って行く。
こうした工事は大変な費用がかかるのは想像に難くないが、しかし、その割には時間の短縮は僅かなもので、1か所で数10秒がよいところであって、1分を縮める為には莫大な費用を要することになろう。
それでも前述のように弛まぬ努力をする近鉄という会社の姿勢に感心するのである。

アーバンライナーは名阪間を2時間7分程度で結んでいる。
新幹線のぞみは名阪間を51~2分で走る。ただ新大阪駅は街の北側にあるので、もし南の難波が目的地とすると、乗り換えと地下鉄で30分程度かかるので1時間20分程度となり、それでも近鉄よりは30分程度早い。
しかし、次に金額を比較すると新幹線は6,380円で近鉄は4,150円であり、近鉄は圧倒的に安く、従って車内も快適なアーバンライナーの利用者が増えているのも納得出来る。

こうして比較してみると近鉄が時間短縮に費用を投じるのも頷けるし、もし、あと8分縮められれば名阪間が2時間を切り、大きな宣伝効果と共に営業的に大きく前進することだろう。
それでも費用対効果として帳尻が合うのかなぁ、と、考えた時に、これまたフト、別の想いがよぎった。
ひょっとして、関西鉄道の再来を恐れてはいまいか、と。


愛知停車場.JPG

それは、昔々と言うか明治30年代の話、名阪間には壮絶な競争があったという。
現在の東海道線の官営鉄道(後の国鉄)と、現在の関西線の路線を作った私設(私鉄)の関西鉄道がそれである。
写真は関西鉄道の名古屋駅にあたる愛知停車場(鉄道ピクトリアル誌を撮影)
関西鉄道は多分に攻撃的な会社だったようで、国営たる官営鉄道相手に次々と勝負を仕掛けている。
あの島 安次郎(新幹線を構想し、後に長男の島秀雄が結実した)を擁した関西鉄道は、新しい蒸気機関車で所要時間の競争に挑み(それでも当時は5~6時間かかっていたのだが)、客車も良い車両を使い、弁当をつけたり、列車ボーイを乗せたりとサービスにつとめ、その上に強烈な運賃引き下げ競争を仕掛けていた。特別料金不要の急行列車を走らせたりもしたが、官営鉄道が料金に対応してくると2日後には再び値引きをする、といった具合に、壮絶な旅客獲得競争を繰り広げて官営鉄道を散々困らせている。

亀山停車場.JPG

しかし、国は明治39年の鉄道国有法の発令により、翌40年には関西鉄道を国有化した。
以後は国鉄の関西本線となったが、本来の東海道線を優遇するために関西線を伊勢参りの参宮線との連絡を重視する形としたり、要するに斜陽路線化させた。
写真は亀山停車場(鉄道ピクトリアル誌を撮影)

などと言う、名阪間には競争の歴史があるのだが、あるいは近鉄はJRが何かで目覚めて関西本線のテコ入れをして勝負を仕掛けはしまいか、と、どこかに恐れがあったりするのではなかろうか。
事実、近鉄の路線距離と関西線を比較すると、近鉄が伊勢中川・大和八木経由でかなり南に迂回するのに対して、関西線は名古屋から亀山、奈良経由で、ほぼ真っ直ぐに大阪の南に向かうので距離が短い。
また非電化路線ではあっても、今のワイドビュー高山/南紀に使用しているキハ85系は電車並みの高速性能を持ち120km/h走行をいとも簡単にこなす。2機搭載しているカミンズ製エンジンは力強く、登坂性能も高い。
だから、その気になれば近鉄と勝負出来そうに思えるのだが・・・
ところがドッコイ、路線の中間部分の亀山~木津間は線路状態が悪い。設定速度も低いし保線が悪くて揺れもするが、それ以上に山間に入ると線形が悪く、カーブが続くので飛ばすことが出来ないのが現状である。
従って、時間短縮をするためには路線の整備、線形の拡大といった投資が必要になる。
それに、関西線は亀山を境にJR東海とJR西日本に分かれ、あまり手を組んで近鉄に勝負を仕掛けよう、などという雰囲気には成り得ないだろう。
それでも、万が一にも、JRがその気にもならないように近鉄は常にスピードアップを図っているのではないだろうか、と想像するのは・・・やはり考え過ぎだろうな。

アーバンライナーから流れる景色を見つつ、チョット昔を偲んでみた話ではある。


Profile

☆畑川 治 1947年生まれ
レースアドバイザー
趣味: 運転、旅行、鉄道、その他

このブログ記事について

このページは、Osamu Hatagawaが2009年5月20日 10:51に書いたブログ記事です。

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