Essay/Column/Diary

レーシングドライバーの運転 その2 雨

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雨の視界JPEG.jpg

前々回の「レーシングドライバーの運転」へのアクセス数がとても多かった。
ということで、今回はその流れでもうひとつ。
我々、レーシングドライバー仲間の、普段の会話に出てくる危険な運転の話。


追い越す車_3JPEG.jpg

それは、レーシングドイバー自身の運転の話ではなく、レーシングドライバーから見た、一般の方の運転についての話。
「この前、高速道路を走っていた時ひどい雨になって、危ないから70キロも出せないほどだったのに、横を120キロ位で抜いてく車が何台もあるんだけど、あれ危ないよなー」
という会話、全くそのとおり。

もし、レーシングドライバーが危険を顧みず、命がけで無謀に車を走らせる人種だと思われていたら、それは大間違いだ。
車という機械を速く走らせること、つまり、最も性能が出るように操作してやるのが本来であり、無論、コーナーへの突っ込み速度など、最後のギリギリのところでは車の限界を超えさせる(タイヤのグリップ限界を超えて滑りに入る)ので、ある種、度胸も必要とする。
しかし、それらも「行ける」という確信の上でトライ出来ることであり、めくら滅法突っ込んでも、即クラッシュに繋がるだけなのである。
そう、先の読めない「めくら運転」はまずやらない。

ということをベースに、雨の運転の話に戻ろう。
多くの人が経験しているように、雨がひどいと多量の水滴や、前車の、特にトラックの巻き上げる水煙で著しく視界が悪くなり、ワイパーを高速にしても画像が歪むほどにもなる。そんな中では速度を落とさないと先が見えないし、先行きが読めない、つまり「めくら運転」状態となってしまう。
とはいえ、レースではしばしばそうした状況になることも事実で、競争している限りはアクセルを戻す訳にも行かず、レーシングドライブの最も嫌な部分ではある。
しかし、普段の道でそんなリスクを犯す意味は全くなく、運転本来の「読める」状態まで速度を落とすのであるが、その飛ばしている人達は、この先で何も無いと思っているか、あるいは何も考えていないのか、平気でスッ飛んで走っているが、それこそ命がけである。
それと、そのように飛ばしている人が平気で走れるのは、ハイドロプレーニングで、車が水に乗り、滑り始めたらどうなるか、などと考えていないからでもあろう。
まず殆どの人は水に乗ってスピンする、などということは経験したことがあるはずもなく、万一、車が水で浮いて滑り始めたら、など想像も出来ないだろう。
逆にレーシングドライバーは水に乗る恐怖を良く知っているだけに、その抜いて行く車が、もし滑り始めたら、まずコントロール不可能だろう、と想像するだけで恐ろしくなる、という訳である。

コーナーでの車の滑り出しは、ステアリングやスロットルで調整することでコントロール出来る、しかし、直線で水に乗って回り始めると殆どコントロールが出来ない。無論、それは雨が非常にひどい場合に限るが、通常の雨では、多少、水に乗ってバンッと車が振られても、真っ直ぐハンドルをしっかり持っていれば、タイヤ自体の直進力(セルフアライニングトルク)により回復をする。
しかし、コースが川のようになり、水に乗って大きく滑りはじめてしまった時には、もうコントロール不能で、どうぶつかるかを想定しながら体を構えることになる。
というくらい危険なもので、直線でやったら他の車も巻き込む可能性が大きく、かなり危ない。

事故JPEG.jpg

雨の高速道路では、たいがいこうした事故に出くわす。そして、やはり他車を巻き込んでいる。黒い車の右前部分がぶつかりタイヤが歪んでしまっている。
ハイドロプレーニングを起こさなくても雨ではタイヤのグリップ力が落ちているのでハンドリング等、雑な操作をすると滑りを誘発する。

グリップ力の話になったことのついでに、もうひとつ。
タイヤは幅が広いほど冷えていると危険、って知ってます?
高性能を得る為に履く幅広のタイヤだが、どんな状況でもハイグリップを得られる訳ではない。そして、軽量なスポーツカーほどタイヤが広いと危険な場合がある。
それは、ひとつにはタイヤの幅が広いほど水に乗り易いので、ハイドロ(プレーニング)を引き起こし易い。
どうしても、自分は幅広くグリップの高いタイヤを履いているとか、高性能なスポーツカーに乗っている意識から、ついぞ速度を上げがちだが、大雨の時には水に乗り易いので注意をすべきだ。
それと、温度と面圧の話。
タイヤは温まってこそゴムが性能を発揮するので、タイヤ温度が異常に低いとグリップ性能が落ちる。
そして、幅が広いタイヤでは上からの荷重(車重)が幅広く受けるので、つまり、単位面積あたりの荷重(面圧)はとても小さくなる。
タイヤのグリップ力は、この架かる荷重により激変し、大きく押さえてやると飛躍的にグリップ力が向上する。だからF1等レーシングカーにはタイヤ荷重を大きくする為にウイングを付けている。
その逆で、幅広タイヤは面圧が低いので、タイヤが冷えてグリップ力が落ちていると、とても滑り易い状態になっている。軽量なスポーツカーでは尚更注意すべきだろう。

鈴鹿山中JPEG_2.jpg

そう言えば、私もVEMACのテスト走行で、冬の鈴鹿峠を上って行った時に雪が降り始めて、寒さと共にステアリングが軽くなり、感覚的に明らかに車から安定感が消えて行くのが伝わってきた。
もう、ワインディングロードのテストなど関係なく、確実な速度にまで落としてスゴスゴと引き返したこともあったなぁ。

Profile

☆畑川 治 1947年生まれ
レースアドバイザー
趣味: 運転、旅行、鉄道、その他

このブログ記事について

このページは、Osamu Hatagawaが2010年3月 2日 18:21に書いたブログ記事です。

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