Essay/Column/Diary

エポックメーキングな新製品

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ESU BR215_2.jpg

ヨーロッパで話題となった製品が、今年、日本にも入ってきた。
確かに鉄道模型としてエポックメーキングな出来事と言えるほどの内容の製品である。
上の写真、左がメルクリンのBR218型、そして右が件の製品で、メーカーはESU社、形式はBR215で外観は殆ど同じだ。まずは、ご覧のように煙が出ている。

ESU社は、これまで完成車両は作っておらず、最近の鉄道模型のデジタル化(DCC)のパイオニア的存在で、そのデジタルコントロールの心臓部たるデコーダーを中心に作ってきたメーカーであり、Lok Soundの製品名で数多くのメーカーの車両に搭載されている。
因みに、私のデジタルサウントに改造したC56も、クマタ貿易の製品ではあるが、製造元はこのESU社である。

そのESU社が初めて車両自体を製品化したのが、このBR215であり、それまで縁の下の力持ちだったのが、満を持して表舞台に登場した感があり、本家本元のDCC屋が車両全てを作れば、これほどのことが出来るんだ。と言わんばかりの製品である。よってヨーロッパでも話題となったと思われる。

スピーカー図解.jpg

音から行こうか。
これは製品の蓋の裏側の写真。上の写真は内臓した2個のスピーカー(黒色の部分)と、その音の拡がりを表している。

ベンチレーター穴.jpg

上から出る音は、この屋根中央の、しっかり開けられたベンチレーターの穴からエンジン音を中心に警笛等がダイレクトに放出される。
さすがは本家、音質はクリーンで大きい。エンジンの始動音、走行時の音、止める時のタービンが止まるまでの余韻など実感味があり、エンジン音だけでもかなり楽しめる。

次に、何故下向きにもスピーカーがあるかと言えば、実物では駅構内のポイントや急カーブを走る時に「シャーン、シャーン」とフランジ音(車輪のフランジが線路を擦る音)が出るが、それが再現され、フランジ音が下のスピーカーから出る仕組みなのだ。
これが良く出来ていて、走り出してカーブに入ると「シャーン、シャーン」と車輪を軋ませて走り始める。当然、実車から拾った音だから実感味満点である。
賢いのは同じ半径のカーブを走って行っても、速度が上がると音は消える、確かに、模型は急カーブを走るけれど通常の走行速度になっても「シャンシャン」鳴っていたのではおかしいので消えるようになっている訳だが、デジタルならではの上手い設定である。

下回り全体.jpg

下回りであるが、スピーカーは左の台車の上あたりにあり、下向きに音を出す。
そして、両台車には車軸の横動を感知してフランジ音を出す仕組みが組み込まれている。
左台車の真ん中のベロはメルクリン3線用の集電シュー。同製品は通常の2線用仕様も当然ある。
拡大して頂くと判るが、深いディテール表現と共に、かなり精緻な作りである。

もうひとつの大きな特徴はディーゼル機関車にも関わらず煙が出ることだ。
これまで煙は蒸気機関車の専売特許だったが、ここにもメスを入れてきたか、という感じだ。

エンジンスタート煙.jpg

何とも感じが良いのは、ファンクション1(F1)でエンジンを掛けると、「ムーンンン!」とグローで燃焼室を温めているような準備音がしばらく続き、やがてセルが回り、「ブワン!!」とエンジンが掛かると同時に、屋上の排気口から勢いのある煙が噴き上がり、本当にエンジンが搭載されているのではとさえ思わせる。しかも掛けた瞬間だけ噴き上げ、後はボヤボヤとした煙になる。
煙は何時までも出ずに、エンジンが暖まると減るように、ある程度走らせていると消える。
但し、発煙装置は不安定である。発煙用オイルを注入し、熱して煙を出す仕組みだが、オイルを多く入れ過ぎると発煙しなかったり、何かと煙が出ないことが多い。

メーターライト.jpg

光は、ヘッドライトやテールは当然で、ただ、片ヘッドや片テールといった、運用による違いも表現出来るようになっている。
そして運転室ライト、これも今や当然か。
では、運転席のメーターライトはどうだ。写真は暗くて見づらいと思うが、メーターライトが光っているのが見て取れよう。
ほんと、よくやるよなぁESU、という感じだな。

走りは、当然DCCだからスムーズ、DCCのネックは集電不良による急停止だが、ダイキャスト製車体による車両重量は重く、輪荷重が大きいので、まず2線式でも集電不良は起こりにくいだろう。その上、コチトラはシューを備えた3線式で集電は完璧、全く問題無くスムーズに走り回る。
止める時、少し急にスロットルを戻すと「ギーギギギーッ」とブレーキのスキール音、それもかなりリアルな音を出しながら停止する・・・たまりませんなぁ。

最後にディテールだが、日本では外観に拘る傾向が強く、一方ヨーロッパは比較的線が分厚く、しかし塗装や文字マークに拘る傾向にあるのだが、
このESUの新製品は、ヨーロッパの製品としては、かなり細かいところまで作りこんである。
ワイパーは一体成型で無く、細かい作りのそれが組み込まれているし、ジャンパー栓あたりも作り込んであり、スカート横のステップの網も抜けている、またバッファーはバネが入り可動式となっているなど、かなり頑張った感が強い。
本当はウエザリンクでも施せば、かなり実感的になるのだろう。

アップ_2.jpg

デジタルで操作出来る内容をファンクションキーで表すと下記になる。
F0 Fahrtrichtungsabhangiger Lichtwechsel ヘッドライト・テールライト
F1 Fahrgerausch (ein/aus) ディーゼルエンジン音
F2 Signalhorn 1 警笛
F3 Raucherzeuger ein/aus 発煙
F4 Fahrtrichtungsabhangige 運転室ライト
F5 Licht aus an Fuhrerstand 1* ヘッドライト消灯
F6 Licht aus an Fuhrerstand 2* テールライト消灯
F7 Fahrtrichtungsabhangige 運転席メーターライト
F8 Rangierbeleuchtung 停車灯
F9 Signalhorn 2* 警笛2
F10 Luftpresser コンプレッサー音
F11 Bahnsteigansage ホームのアナウンス
F12 Weichen-/Kurvensensor aus カーブセンサー
F13 Kupplungsgerausch
F14 Doppler-Effekt
F15 Luftablass
F16 Schaffnerpfiff
F17 Glocke ベル
F18 Achtungspfiff Signalhorn 1
F19 Achtungspfiff Signalhorn 2
F20 Sanden 砂
F21 Rangiergang (Direktsteuerung)

という具合に、何かよく判らないものまで、実に色々と詰め込まれているのだが・・・・
問題は、私のシンプルなコントローラーではF4までしか操作出来ない。
まあ、
肝心のところはF4までに入っているからいいけどね。

いずれにしてもデジタルの世界は急速に進化している。
このBR215はひとつのターニング・ポイントかも知れないが、今後、色々なことがデジタル制御で可能となるだろうし、鉄道模型の愉しみ方の幅を、どんどん広げてくれることだろう。
ただ、日本の模型メーカーが、こうした世界の潮流から大きく遅れていることは残念である。

日本の蒸気機関車のドラフト音と煙、ホイッスルやタイフォンの音、釣り掛け電車やVVVFの音、駅のベルや出発チャイムに構内放送、それにドアの開閉やパンタの上げ下ろしなど、日本型をデジタル制御で愉しんでみたいと思うのだが・・・

Profile

☆畑川 治 1947年生まれ
レースアドバイザー
趣味: 運転、旅行、鉄道、その他

このブログ記事について

このページは、Osamu Hatagawaが2011年7月21日 22:55に書いたブログ記事です。

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