Essay/Column/Diary

RUSHを見た、のだが・・・

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□RUSH_1.jpg

レーシング・ドライバーのジェームス・ハントとニキ・ラウダを扱った話題の映画「RUSH」を見た。
仕事柄、見ておかねばとも思い足を運んだ。
映画は1970年代のシーンで、全体にとても懐かしかったし、最後の1976年の富士スピードウェイでの「F1イン・ジャパン」は実際に行っており、ラウダが走行を止めてリタイアしたのも、ハントがチャンピオンを獲得したのも見ていたものだった。

映画は事実に基づいた事象であり、その断片を上手く繋いで、且つドラマチックに仕立てられたものだった。
映像的にも非常に良く撮られており、各シーンは実感味があった。
これまでのレースを扱った映画の中では、良く出来た映画だと思った。
しかし・・・
まあ、レースの世界の中に居て、知り過ぎている当方に原因はあるのだが、
色々な場面で、モータースポーツの本質を捉えられていないシーンがあり、その都度、白けてしまった。

例えば、レースは命知らずの競技という部分を強調しているし、ハントが速いのは度胸があるからのような視点。
本来、順番が違うのだ。
ある人の秀でた才能が、歌手でもなく、絵描きでもなく、サッカー選手でもなく、車を速く走らせる能力に長けていたのであり、レーシング・ドライバーとなるのだが、ただ残念ながら、このスポーツには同時に危険を伴うものだった、ということである。
よって、本来のドライビング・スキルと共に、度胸も試される部分があるのは事実で、
映画の中ではハントがメディアに勝因を聞かれた時に「ビッグ・ボールさ」と冗談を飛ばしていたが、コースによっては度胸の度合いも大きくなる。
しかし、逆に度胸があれば速いのか、というと、それは全く有り得ない。運動能力が低くて英知の無い人間など、全く速くなれないドライバーであるし、即、怪我をしてしまうだろう。

あるいは、ラウダがBRMチームに移籍した時、チームを訪れ、ガレージで車を見ただけで、改造箇所や使用材料の変更を指示していたが、あのね、いくら多少の知識があるとは言ってもドライバーでしょ、設計者は馬鹿じゃ無いのよ、と思ってしまう。

また、映像の上で効果的に見せる為だろうが、映画の常套手段で、ラウダとハントが並行して走るシーンが何度もあるが、レースでは、まず横に並んだままで先を競い合うということは殆ど無い。
それに、二人の会話はあまりにライバル心むき出しで、抗戦的過ぎるのも気になった。

というように「それは無いだろ」と思う部分も少なくなく、都度、違和感を覚えてしまった。
前述のように、当方に問題があるからで、僅か2時間程度の時間の中に、ドラマチックにストーリーを展開させ、感動を与えるには、そうなるのかな。

事のついでに、私の知るニキ・ラウタの話をひとつ。
1979年の話。私も英国でF3レースに出ていたのだが、F1のイギリスGPでもニキ・ラウダの人気は英国人ドライバーを凌いで、とても高いものだった。
それは、ラウダがBBCテレビに出演した時の内容に、多くの人が感銘を受けたからだ、という話を聞いた。
まさに、あのドイツGPでの事故のことで、
病院に運び込まれたラウダは瀕死の状態にあった。
ラウダは僅かな意識の中で、死の渕に立っていることを理解しており、その時、自身に問いかけた。
「自分は死にたいのか、生きたいのか」と。
どちらの選択も出来る状態だったのだ。
自問した答えは「生きたい」だった。
「では、生きるにはどうすれば良いのか」
と考え。
「生きるには、今は医者に全面的に協力することが最大の出来ることだ」
ということは、
「じっと動くな、と言われたら、何時間でもじっとしよう」
あるいは、
「目を動かすな、と言われたら、何時間でも止めていよう」
というような話がされたという。
死の瀬戸際に居た時の、ラウダの思考法とか決心の強さが写し出され、人間ラウダの魅力に多くの英国人が感銘を受けた。
そしてサーキットに戻ってきたラウダに対し、
国籍などに関係無く、実に多くの人が賞賛し、多くの人がファンであった。
という話。

私は、モータースポーツの真の魅力を捉えた映画がいつか出来れば、と思う。
決して、無理にドラマチックにしなくても良いのだ。
「事実は小説より奇なり」
そして、
「スポーツは筋書きの無いドラマ」
であるのだから。

それにしても、映画のニキ・ラウダ役を演じたダニエル・ブリュール、
事故後の包帯姿の顔など、まるでニキ・ラウタそのものだったな。

ラウダ.jpg
(写真はプログラムから)

Profile

☆畑川 治 1947年生まれ
レースアドバイザー
趣味: 運転、旅行、鉄道、その他

このブログ記事について

このページは、Osamu Hatagawaが2014年2月27日 23:46に書いたブログ記事です。

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